渡辺晋二さん(仙台環境開発株式会社)

東日本大震災により発生したがれきの推定量についてはマスコミ等で報道されていますが、東北3県:2260万t、宮城県内:1590万t、内仙台市内:135万tです。宮城県は東北3県のがれきの70%を占めており、当社が処理に関わっている仙台市内のがれき量は、宮城県内のがれき量の1割弱となっています。

 

宮城県では仙台市以外は処理が進んでいません。ではなぜ仙台市が早かったのか。私は、責任と権限が仙台市にあり、それをこなすスタッフがいるからだと感じています。災害廃棄物は一般廃棄物で、一般廃棄物は各市町村の責任で処理するという決まりがあります。現在、市町村が県に委託し県がゼネコンに委託するという図式で宮城県は進み始めましたが、この仕組みで本当にスピード感を持って進めることができるのでしょうか。例えば、処理先を見つける責任はゼネコンにあるのでしょうが、ゼネコンが見つけられなければその責任をゼネコンに押し付けるだけでよいのでしょうか。また、見つかったとしても価格が合わなければどうするのでしょうか。仮置き場での選別作業は重機と人で行う作業なので建設現場と同じです。したがって、本来、重層下請を認めるべきです。なぜならその方が効率的だからです。

 

しかし、一般廃棄物処理の場合再委託禁止という決まりがあり重層下請は認められません。これだけの規模の事業に対して、ピラミッド型の組織を作らずに統率できるのでしょうか。そもそも、1000年に1度という大災害に遭遇してもこのようなルールに縛られなければならないのでしょうか。膨大な廃棄物量をこなすにはどうしても県外の力が必要です。当社にも県外民間企業から協力に関する話が来ています。私たちはそのような協力依頼に「よろしく頼む」と言いたいところですが、どうしても「放射能は大丈夫ですか」という会話になります。県外の多くの企業は協力する意思はあるのですが、その地域の住民に説明するのは非常に難しいのが実態です。

環境省はリサイクル物の放射能基準を100Bq/kg以下と定めました。100Bq/kgは完成品に含まれる放射能です。例えば1000Bq/kgの木くずを10%混入した木製品は100Bq/kgなのでOKということになります。とはいえ、この管理をだれがどのように責任を持って行うのでしょうか。

このように放射能に対する対応が明確にならないと現場でどのように対応すべきかわからないのです。


現在進行形にある東日本大震災の復興に向けた取り組みについて随時課題を整理し後世の糧にする必要があります。特に今回、私たちはがれき処理に立ち向かっていますが、一度に大量の廃棄物が発生した場合の受け皿の確保が極めて重要であると感じています。特に最終処分先の確保は痛切です。今後、東南海地震等が予測されていますが、このような準備は国家や企業の危機管理の重要な要素であると考えます。