高取知男さん

大学生時代に、魚類調査で3年間広瀬川に来ました。その頃は、多摩川上流の秋川ほとりに住んでいて、目の前が川遊びと釣りポイントでした。秋川の盛期は、竿を振る場所がないほどなので、広瀬川を初めて見て広いなと思いました。東京は,ヤマメやイワナが釣れる場所が少なくて、イワナは2カ所位です。広瀬川では、イワナを何匹も釣ることができ、ヤマメを一日で20尾釣り、翌日に20尾釣ったことがあります。

シマヨシノボリはハゼの仲間で、広瀬川でよく見ることができます。私が一番好きな魚です。眼が水色で、ほほに赤い筋があり、♂♀ともとても綺麗です。産卵期の♀は、お腹がラピスラズリのような綺麗な青色になります。

 

愛宕橋付近は、水質測定点になっています。昭和38年頃は、BOD9ppmで魚が住めない数値ですが、その後に仙台市が下水道整備を始め、普及率が高くなるにつれて水質が良くなりました。広瀬川の環境基準値であるBOD 3は、アユが一番住み易い水質を目標として設定されたものです。広瀬川で最初に魚類調査をした昭和49年頃は、BOD3前後でした。それでも,愛宕橋付近のアユが臭くて食べられないこととか、青葉山付近から上流になるとアユを食べることができると言う話が釣り人の間でありました。

 

愛宕堰の魚道は勾配が緩やかで、名取川の赤石付近の魚道も緩いです。しかし、他の古い魚道は、1/7位の急な勾配です。土地柄もあって、昔からサケが上れば良いと考えたようですが、アユを上らせるにはもっと緩い方が良いです。愛宕堰は、魚道を流れる水が少なく、入口で迷う魚が多かったです。六郷・七郷地区にかんがい用水を取るための堰ですが、余分に取った水を魚道よりも下流側で広瀬川に戻しているのが原因でした。しかし、魚道の姿形が良いので好きです。


広瀬川本流よりも、支流の大倉川は流程が長く、二次支流の横川も長いです。広瀬川は、大きな支流が上流域にあり、中流域の支流が少ないです。熊ヶ根付近から上が上流域、熊ヶ根から愛宕大橋までが中流域、愛宕大橋付近から下が下流域です。


カジカは、いくつかタイプがあります。カジカ大卵型は、卵が大粒で、生まれる仔魚が大きいので、海に下らなくても成長できます。源流から中流域に分布しますが、広瀬川の牛越橋になると見られません。いつもいるのはもう少し上の郷六付近までです。カジカ大卵型は、南三陸地域の小さな川の上流にもいます。以前に、ウツセミカジカと呼んでいたのがカジカ小卵型です。大卵型と同様に石の裏面に卵塊を産み付けます。カジカ小卵型は、小さく生まれた仔魚が海へ流れ下り、少し大きくなってから再び川に帰ってくる回遊魚です。カジカ小卵型がいるのは、三陸地域の中小河川の下流です。これを、名取川の東北本線鉄橋付近で3匹採りました。下流に住むカジカ小卵型も、大卵型と同じ良好な水質環境を求めるので、小卵型がいたのは、当時良好な水質環境だったと言えます。

 

希少種エゾウグイがいるのは、宮城県で2か所だけです。広瀬川支流の青下川と、阿武隈川支流の白石川上流に生息しています。初めに見たとき、県内にいないと思っていたので、アブラハヤと思って逃がしました。帰り車の中でもしかと思い、戻って採集したらエゾウグイでした。アブラハヤとは目つきが似ています。幼魚のアルコールやホルマリン標本では見分けが難しいので、尻びれの位置を調べます。尻びれ前縁が背びれ後端の前方にあるのがアブラハヤです。ウグイとの見分けは、尾びれの付け根に、ひらがなのくの字形にメラニン色素沈着があるのがウグイです。マルタは大きなウグイの意味から、オオウグイ→オオガイになり、これが仙台付近の方言です。マルタは、4月から5月に川に産卵に戻って来ます。婚姻色のアカハラの時期の追い星がウグイと比べて細かいです。追い星は、オイカワなどに見られますが、浅瀬で穴を掘る際などに体を守るためのものです。

 

広瀬川に沢山いるのは、少し前までウグイでした。広瀬川は、とても中流が長く、中流の代表的な魚としてのウグイが相対的に多いのですが、絶対量が減りました。それより以前は,オイカワが非常に多かったです。ウグイは、食べ物でアユと競合しません。オイカワは、平瀬の藻をついばむのでアユと競合します。そのため,オイカワが増えるとアユが育たないので漁業協同組合の人たちがオイカワ退治をした時期がありました。そんなに多かったオイカワがウグイと入れ替わった理由は、水質の改善があげられます。オイカワは、少し汚れた水BOD3が住み易いのが,ウグイがより住み易いきれいな水BOD2かそれ以下になったからです。

現在は,ウグイが減って、アブラハヤが目立ちます。緩やかな場所の魚ですが,平瀬まで出てきています。水質に敏感なウグイと違い,アブラハヤは水温が低ければ水がきれいでも汚れていても住めてしまいます。

 

久しぶりにアユ釣りをしました。思いがけずウグイを沢山見かけました。でも、本来の川は、魚が踏んづけるくらいいなければならないものです。ギバチは、広瀬川ではとても多くて普通の魚に見えます。しかし隣の山形県ではほとんど滅んでいます。

水質の改善とか、浮き石の減少など、ウグイなどの魚の減少につながっている様に思います。石の裏側まで使える石が減ったのは、洪水の減少に関係しているはずです。その他にも原因があるはずなので、皆さんも見つけてほしいと思います。